旅行

【2020年】記憶に残る旅行~無人島編~

リクルートスーツを身にまとい、

グループ面接を受けていた私は

面接官から

「学生時代の一番の思い出は?」

という質問に対して、

私は小さく微笑みました。

『そうですね。やはり、廃そ・・・いや、ちょっと待ってください』

少し刺激が強すぎるエピソードだったこと、

また、参加者の多くが同年代の女性だったので

もう一つの記憶を呼び戻す。

『失礼しました。

皆さんは「世界の中心で愛を叫ぶ」という作品を

ご覧になったことはありますか?』

同年代の参加者は勿論のこと、

面接官の方々も頷いていました。

『映画版もドラマ版もどちらもキャスティング含め

とても良かったですよね。

また、平井堅の主題歌「瞳を閉じて」も

大ヒットしました。

では、皆さん、

「猿の惑星」はご存知でしょうか?』

「え?猿の惑星ですか??」

『はい、ピエール・ブール原作の

名作「猿の惑星」です』

「まぁ、それは知っていますが・・・」

『私は学生時代、この2つの作品に関連する

出来事を同時に経験しました』

当時、何故面接でこの話をしたのか

今でも分かりません。

ブブブブブブブブブ

5人乗りの小さな漁船に揺られながら、

この先に待ち構えている体験に

期待と不安な気持ちが入り混じっていました。

『きっと今日という日は、

絶対に忘れられない日になる。

そう思わないか!?』

振り返ると、昨年の廃村に続き、

目隠しで見知らぬ漁港に連れられて

小さな漁船に乗せられていることに

不服そうな友人たちの視線を感じた。

デジャブかと思ったけど、

気にしないことにした。

何故なら、漁港から見えていた

島がどんどん近づいていくに連れて

興奮していたからだ。

今年の旅行先に選んだ場所は無人島、

その名も『浮島』。

『あぁ、セカチューみたいな恋してー』

当時、セカチューを映画やドラマで

何度も見ていた時期と旅行場所を

探していく時期が重なり、

横で録画したドラマを見ながら寛いでいる

友人を尻目に私は内心焦っていた。

〈昨年の廃村旅行は大成功だったが、

逆に今年の期待に応えなくてならない

プレッシャーが半端ない。

これが名曲を生み出した

プロデューサーが抱えている悩みってやつか・・・〉

と、中二病全開だった時に

ドラマのワンシーンを見ていて衝撃が走りました。

『こ、これや(※関西人ではありません)』

「ん?旅行先決まったん・・・」と

喋っていた友人の口を掴み、

『毎年の旅行は、常にシークレットだが

見られたからには仕方がない。

情報を共有する代わりに、

絶対に漏らさないことを誓え』

ふごふご、言っている友人を強引に頷かせた後、

そこからネットで直ぐに

ドラマの撮影場所を特定、

色々と調べていくうちに無人島の所有者から

承認を得られれば宿泊することも

可能ということが分かり、直ぐに連絡を取り、

翌週には面接という形で直接自宅に出向いて

自分たちが真面目などこにでもいる

健全な大学生であることをアピールし、

宿泊許可を得ることに成功しました。

島に到着後、翌日の迎え時間を伝えて

漁師さんたちは漁港に戻り、

島には私たち以外の誰もいなくなりました。

島には小さなコテージがあり、

その中で宿泊することも出来るし、

山頂に登り、そこでテントを立てて

寝泊まりすることも出来ます。

しかも、日本(千葉県)と思えないくらい、

海がキレイで泳いでいる

魚の姿が見えるくらい

透き通っていました。

勿論、私たちは直ぐに持ってきていた

水着に着替えて海水浴を開始、

防波堤から飛び込んだりしながら

1~2時間ほど遊んでいると海から

上がってきた友人Y君が

水着を肩に担ぐような形で

全裸で向こうから

歩いてくる姿をみて、

誰もが思っていた疑問をぶつけました。

「どうなされたのですか?」

その質問が愚問かのように

彼は微笑みながら

「ここは無人島、俺たちしか存在しない楽園。

逆に問おう。

何故、君たちは水着をまとっている?」

衝撃でした。

同じ国、同じ街で生まれ育ち、

同じ環境で育ってきたのに

彼の言葉の意味が

全く理解出来ませんでした。

しかし、人間の環境適応能力は

恐ろしいほど高く、

一人、また、一人と

水着を脱ぎ捨てていき、

遂に最後の一人になった

私をまるで変人扱いで見られている

この村八分感、結果、全員が生まれた姿で過ごす

うちにそれが当たり前になりました

(P.S.この島にいる人種は、汚れた野郎のみです)

しかし、そんな私たちが開放的な姿で

過ごしていると突然どこからか

お金持ちのクルザーが出現。

あろうことか無人島に人がいるのが

珍しかったのか突然上陸。

私たちは、まるで猿の惑星に登場する猿のように

突然現れた人間から逃げるように

裸のまま森の中へと姿を消していきました。

人間たちが立ち去った後、

私たちはようやく正気に戻り、

水着を着用、夕食の支度を始めました。

バーベキュー用の道具も用意されており、

時間も忘れて波音を聞きながら、

ふと空を見上げて言葉を失いました。

「これは、、、」

「いやはや、ここまでとは・・・」

東京から2時間ほど離れただけで

まるで別世界のような景色があることを

私たちは知りませんでした。

『私は、誰かにサプライズすることがとても好きです。

何故なら、成功した時の笑顔を見ると

幸せな気持ちになるから。

私は御社で小さなサプライズを

たくさん作って多くの

お客様を驚かせて笑顔にしたい。

それが私の一番の思い出であり、

私が御社を志望した動機でもあります』

私の話を来ていた面接官は微笑みながら

最後にこう言いました。

「きっと君の前世は、ペテン師なんだろうね」

「はい、母親からは、

あなたは口から生まれた子だから認知しない、

そう言われています」

この話を友人にすると、

早く別の会社を探せと言われて

探している最中に

内定の連絡をもらった時に

5回聞き返したことも今ではいい思い出です。

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